ことばと猫と音楽と

英語を教える仕事をしています。猫が大好きですが、今は飼っていません。子どもの頃から大人になるまで、音楽を勉強しました。今も細々と学んでいます。食べることが大好き。

イギリス② ロンドン

ロンドンには一年いました。
地下鉄のラッセルスクエア駅の並びの、インターナショナルホールという大きな寮に暮らしました。少し離れたところに女子寮や、少し高級な寮もあったのですが、わたしは寮費が最も低額で、日本人があまりいなさそうで、いちばんワイルドな予感のする、そのホールに暮らすことを決めたのでした。

ホールには200人ぐらい(すごくざっくり)の学生がいたのかしら、イギリス人もいましたが、世界各地からの留学生もたくさん生活していました。

一階が受付と事務所、地下に食堂とバーとピアノ室、2回から上が居住スペースで、女子の階と男子の階が交互になっていました。私の部屋は220、イギリスでは一階をground floorと呼ぶので、実質三階ということになります。

インターナショナルホールでの生活はワイルドで、ナイーヴな私にはシゲキテキなものでした。キッチンにはシンクと電子レンジと電気ケトルしかなく、調理はほとんどできないのですが、ケトルでインスタント麺を茹でた跡が放置されていたり、フロアにひとつあるバスタブで、隣の部屋のフィンランド人の女の子が、イギリス人の彼氏とふたりで入浴していたり。地下にはバーがあって、毎晩学生がそこでビールやカクテルを飲んでいました。わたしもラガーをハーフパイント、とか、カールスバーグアイス、とか、ラムアンドコークなんかをカッコつけて飲んだりしていました。

夜に地下のピアノ室で練習を終えて、部屋を出ようとしたらドアの取っ手が外れて閉じ込められたこともありました。地下の反対側にあるバーに人がいる気配がしたので、ありったけの力でドンドンドアを叩いて、大声で何度もへーぅぷ!と叫びました。やがてだれか知らない男の人が気づいて、寮の受け付けの女の人を連れてきて、ふたりで救出してくれました。ドア越しには英語で話していたのでわかりませんでしたが、開けてみたらびっくり。助けてくれたのは日本人の学生でした。名前を聞いたら「スシ」って。外国で覚えてもらいやすいように、ニックネームだったのでしょうね。スシさんは、今どこで何をしているのかしら。

寮の受け付けの黒人やインド系のおじさんたちや、お掃除のアフリカ系のお姉さんたちともたくさん話しました。地下の食堂の小柄なおじさんは、いつも女の子たちをプリンセス、って呼んでくれたな。色々な国のたくさんの人たちに囲まれて過ごしたあの時間は、振り返ってみれば、本当に本当に貴重な時間だったことです。