ことばと猫と音楽と

英語を教える仕事をしています。猫が大好きですが、今は飼っていません。子どもの頃から大人になるまで、音楽を勉強しました。今も細々と学んでいます。食べることが大好き。

イギリス① ホームステイ

  大学四年生の年に、一年間大学を休学して、イギリスに留学しました。わたしの大学には当時ロンドンのとある大学と交換留学制度があり、その試験に通ったからです。交換留学なのになぜ休学なのかは、話が長くなるので省略しますが、わたしはイギリスで、英語と社会学の基礎を学びました。


 ロンドンで大学のコースが始まるまでの三週間、わたしはとある海辺の町でホームステイをしながら、語学学校に通いました。ホストファミリーはトニーとマーガレットという優しいイギリス人ご夫婦で、お友達と老人ホームなどを回って歌や楽器演奏のショーを行う、明るく気さくな方たちでした。夫妻はわたしの歌をとても気に入ってくださり、一緒にショーに出演させてくださったり、地元のタレントショーに出演させてくださったり(なんと優勝しました♪)、たくさんの良い思い出ができました。


 トニーとマーガレットはリタイアしたご夫婦で、語学学校へ通う外国人の学生をホストファミリーとして受け入れる他は、日々生活を楽しんでいました。ご夫妻にはひとり娘のアシュリーがいて、ポールという優しい旦那さんと近所に住んでいました。


 トニーとマーガレットのおかげで、わたしのイギリス生活の始まりはとても楽しいものとなり、イギリスの人たちの家庭生活を垣間見る、貴重な経験ができました。


 イギリスといえば紅茶、ですが、イギリス人は本当にたくさん、紅茶を飲みます。朝食はトーストとシリアル、紅茶。軽食にサンドイッチまたはチーズとビスケットと、紅茶。夕食のあとしばらくしたら、またチョコレートと紅茶など。イギリスでは軽い食事のことをteaと呼ぶこともあります。それくらい、紅茶が日常生活に浸透しています。イギリスにいる間はほとんどコーヒーは飲まず、紅茶を飲むことが習慣となりました。


 「紅茶」とは言いますが、日本で入れると赤いお茶も、イギリスでは真っ黒です。イギリスの水は硬水だからだと思うのですが、初めて見たときはとても驚きました。イギリスでは紅茶のことを、black teaと呼びます。なるほどです。


 イギリスでもう1つ驚いたことは、食器の洗い方です。ホストファミリーでは、食後の後片付けはトニーの仕事となっていたので、わたしも毎日お手伝いをしました。使った食器の入ったシンクにお湯を張り、濃い緑色の液体洗剤を入れて泡ぶくぶくにします。スポンジで食器をこすって汚れを落とし、乾いたディッシュクロスで食器を拭いて、食器棚に戻し、終了。なんと、洗剤の泡を水道水で洗い流したりせず、そのまま拭いて終わりなのです。使うときも、そのまま食品を載せたり、水を注いだりするので、毎日少しずつ、洗剤を食べたり飲んだりしていたと思います。


 そういえば、日本の大学に交換留学で来ていたイギリス人の友達も、食器をすすがずに水切りしていたっけ。「薄まっているから大丈夫」、と言っていて、ゾッとしたのを覚えていますが、そのおかげで、diluteという単語を覚えました。


 ホームステイは後にも先にもその一度だけの経験でしたが、今思い返してみると、本当に幸せな留学生活の始まりでした。朝起きてから眠るまで、家族の一員としてわたしを迎えてくださったトニーとマーガレットに、感謝の気持ちでいっぱいです。