運命の日
2匹目のまるくんが亡くなったのは、ある年の12月28日の夜明け前でした。様子がおかしいまるくんに気づいて、家族みんなで飛び起きました。どうしたものかと慌てふためいて、弟が夜間診療のある動物病院を検索している間に、母に抱かれてまるくんはいってしまいました。
家族全員が仕事納めの日。朝一番で動物霊園へまるくんを連れてゆき、みんなで悲しいお別れをしました。真っ白でかわいいまるくんの、ピンクの耳の裏をまだ覚えています。
それからその日どうやって過ごしたのか、どうやって無事にたどり着いたのか、とにかく家族はみんな何事もなかったかのように、それぞれの職場へ出勤し、一日仕事をしたのです。
帰宅すると母が、職場でお世話になっている方から、「猫を飼わない?」と言われたというのです。その方の奥様が猫のブリーダーをされていて、一頭売れ残っているとのこと。「実は今朝、うちの犬が亡くなったばかりで、まだちょっと」と口を開いたとたん、母は朝からこらえていた涙が溢れてしまったそうです。
愛しいまるくんを失った悲しみが大きくて、いつ立ち直れるのか、まだ希望がひとつも見えなかった日。よりによって、その当日に猫を飼わないかともちかけられるなんて。「なんだろうね。不思議だね。」とみんなで言い合いましたが、猫を飼うことはまだ考えられませんでした。
それから数ヶ月が過ぎ、またその方が母に、「あの猫まだ売れ残っているんだけど、飼わない?」と言ったそうです。この頃にはわたしたちは、もしかしてこの子は運命の猫かもしれない、と思うようになっていました。そして家族会議の結果、二つの条件をクリアできたら、その猫をうちに迎えようということになりました。